外壁防水材に関するよくある質問を掲載しています。
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Q1 外壁仕上材の種類は?
外壁仕上材の中で、塗膜が柔軟で伸び性能のあるものを弾性仕上材と総称しています。トップコートの有無や、防水性能と化粧性能の重視程度により、塗膜防水材、弾性タイル、弾性塗料に分けられます。これらの性能基準は必ずしも明確ではありませんが、性能目標にしているJIS(日本工業規格)は次のようになっています。
●塗膜防水材 : JIS A 6021「建築用塗膜防水材」
●弾性タイル・弾性塗料 :JIS A 6909「建築用仕上塗材」(防水形)外壁用塗膜防水材の変遷
1976年 JIS A 6021「屋根防水用塗膜材」公布(通産省) 1989年 JIS A 6021改正 「屋根用塗膜防水材」公布 2000年 JIS A 6021改正 名称が「建築用塗膜防水材」に変更、外壁用塗膜防水材が定められる。
JASS8 防水工事の「外壁防水仕様」改訂2001年 国土交通省「建築工事監理指針」の「防水工事」、「建築改修工事監理指針」の「防水改修工事」に、アクリルゴム系塗膜防水材(L-AW)が外壁用塗膜防水材として規定された旨が記載される。 2016年 国土交通省「建築改修工事監理指針」に「外壁用塗膜防水材を用いた改修(標仕以外の工法)」が独立して加えられる。 国土交通省 建築工事監理指針
◎アクリルゴム系塗膜防水を用いた外壁塗膜防水
- 〇屋根・屋上と異なり、外壁面は雨水がたまることは少ないが、降雨を伴う強風時や、長雨時等には漏水事故が発生している。
漏水事故は目地や建具回りからのものが多いが、コンクリート外壁のひび割れからの漏水も多い。
外壁内部への雨水の浸入は塩害や中性化等に起因する鉄筋コンクリート構造物の劣化を招くため、外壁面での防水工法が必要となる。
また、ALC パネルの長寿命化等のためにも外壁面での防水工法は必要である。 - 〇外壁防水工法としては、アクリルゴム系塗膜防水工法が多くの実績を有しており、JASS 8 のアクリルゴム系塗膜防水工法・外壁仕様(L-AW)に標準仕様として規定されている。
材料の規格は、JIS A 6021 に外壁塗膜防水材として規定されている。
- 〇屋根・屋上と異なり、外壁面は雨水がたまることは少ないが、降雨を伴う強風時や、長雨時等には漏水事故が発生している。
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Q2 外壁防水材の定義は?
外壁防水材上市当時、塗膜工連では、「外壁防水材は、アクリルゴムエマルションなどの合成ゴム原料と、充填材等からなる材料で、その性能はJIS A 6021の基準値を満たした上、常温(20℃)において2mmまでのひび割れ追従性を持ち、かつ0~1mmの繰り返し引張試験で常温にて2500回行なった後、さらに-10℃において2500回以上に耐える性能を有する防水材料」ときわめて高い性能基準を設定していました。
現在ではJIS A 6021に耐疲労性能としてひび割れ追従性に関して高い性能基準を設定しています。 -
Q3 外壁塗膜防水材とは?
屋上用塗膜防水材を外壁用に改質したもので、防水機能と化粧機能を兼備しています。防水化粧材、化粧防水材と呼称することもあります。防水材は下地の動きやひび割れに対しても長期にわたって塗膜が破断しないで追従する性能がポイントで、弾性仕上材の中でも塗膜防水材が最も防水性に優れています。
外壁の防水目的を達成し、建物の美装及び総合的な保護を図るためには、塗膜防水材が最も優れたものとして位置付けられています。 -
Q4:弾性タイル(狭義の弾性仕上材)とは?
従来からあった硬質仕上材を改質して伸び弾性を付与したものですが、品質設計の主眼は化粧性にあります。
塗膜の弾性は環境条件によって低下し、経年変化によって硬くなるものが多く見られます。
これは可塑剤等の添加によって、塗膜に当座の伸びを与えているなど商品設計に起因しています。 -
Q5:弾性塗料(単層弾性)とは?
弾性塗膜を形成するが、外壁塗膜防水材・弾性タイルに比べ吹付量が1/2~1/3と少ないため、塗膜厚も薄くなるので防水性能は劣っています。また、凹凸も少なく、化粧効果や重量感に乏しく、塗膜の弾性が低温時に低下したり、経年で硬くなるものが多く見られます。
なお、通常はトップコートを省略しているので、塗膜の耐汚染性に問題を生じやすい塗料です。 -
Q6:アクリルゴム系とは?
昭和45年頃に屋上用塗膜防水材として建築分野で初めて使用され、まもなく外壁用に適用されるようになりました。優れた性能と豊富な実績により現在では外壁塗膜防水材の主流となっています。
アクリルゴム系は高級アクリル酸エステル成分を85%以上含有している合成樹脂に、適切な架橋剤を添加するか、共存する成分に反応性物質を配合して架橋形にしたゴム状弾性体で塗膜は柔軟で、耐候・耐熱・耐寒・耐オゾン性等に優れています。 -
Q7:アクリル樹脂系とは?
アクリル樹脂は耐候性が良いので早くから屋上用の塗膜防水材や外壁仕上材の原料として利用されています。
アクリルゴムと混同されやすいですが、組成を対比すると下表のようになります。アクリル樹脂はソフトな成分のアクリル酸エステルの含有量が少なく、ゴム化していないことや、可塑剤添加により塗膜に柔軟性を与えていることから、アクリルゴムに比べ、環境温度による塗膜物性変化が大きく、経時により塗膜が硬くなる傾向が強くなります。そのため塗膜防水材としてよりも、弾性タイルや弾性塗料向けに多用されています。ソフトなモノマー(%) ハードなモノマー(%) アクリルゴム 85~95 5~15 アクリル樹脂 40~65 35~60 -
Q8:塗膜防水材と外壁仕上材の違いは?
外壁塗膜防水材の性能を評価するにあたって二つの考え方があります。一つは、JIS A 6909の防水形であり、一つは、JIS A 6021のアクリルゴム系に基づいた考え方です。防水形複層塗材Eの性能については別表1に規定し、主材の上に上塗材を塗布した複合塗膜で試験を行なっています。JIS A 6021に規定された品質は別表2に示しますが、この規格は主材のみの塗膜で評価しています。塗膜防水として両者の品質を比較してみるとJIS A 6021にくらべ、JIS A 6909の防水形では
- 1) 伸びの性能が低くなります。
- 2) 伸びの評価が比較的短期の物性に限られており、可塑剤等で伸びを付与し、長期的には、伸びのなくなる材料も合格する可能性があります。
- 3) 低温及び加熱処理後に伸びの著しく低下するものもあります。特に-20℃の伸びと-10℃の伸びを比較した時、-10℃では伸びても-20℃ではほとんど伸びません。このような感温性の大きいものも合格する可能性があります。
- 4) 弾性タイルの中にはアルカリ溶液中で硬くなる性質のものもあります。
別 表 1
JIS A 6909( 防水形複層塗材E )の品質規格 試験項目 品質規格 低温安定性 塊がなく、組成物の分離及び凝集がないこと 初期乾燥によるひび割れ抵抗性 ひび割れがないこと 付着強さ 標準状態 0.7 N/mm2以上 浸水後 0.5 N/mm2以上 温冷繰返し 試験体の表面に、ひび割れ、はがれ及び膨れがなく、かつ著しい変色及び光沢低下がないこと 透水性 B法 0.5 mL以下 耐 衝 撃 性 ひび割れ、著しい変形及びはがれがないこと 耐候性 A法 ひび割れ及びはがれがなく、変色の程度がグレースケール3号以上であること 伸び 標準時 伸び率 120%以上 -10℃時 伸び率 20%以上 浸水後 伸び率 100%以上 加熱後 伸び率 100%以上 伸び時の劣化 はく離、反り及びねじれがなく、主材に破断及びひび割れがないこと 別 表 2
JIS A 6021( 建築用塗膜防水材「アクリルゴム系外壁用」)の品質規格 検査項目 品質規格 引張性能 引張強さ 試験時温度 23℃ 1.3 N/mm2以上 試験時温度-20℃ 1.3 N/mm2以上 試験時温度 60℃ 0.40 N/mm2以上 破断時の
伸び率試験時温度 23℃ 300%以上 破断時のつかみ間の伸び率 試験時温度 23℃ 180%以上 試験時温度-20℃ 70%以上 試験時温度 60℃ 150%以上 引裂性能 引裂強さ 6.0 N/mm以上 加熱伸縮性能 伸縮率 -1.0%以上1.0%以下 劣化処理後
の引張性能引張強さ比 加熱処理 80%以上 促進暴露処理 80%以上 アルカリ処理 60%以上 破断時の
伸び率加熱処理 200%以上 促進暴露処理 200%以上 アルカリ処理 200%以上 伸び時の劣化性状 加熱処理 いずれの試験片にもひび割れ及び著しい変形があってはならない。 促進暴露処理 オゾン処理 付着性能 付着強さ 無処理 0.70 N/mm2以上 温冷繰返し 0.50 N/mm2以上 耐疲労性能 いずれの試験体にも塗膜の穴あき,裂け,破断があってはならない。 たれ抵抗性能 たれ長さ いずれの試験体も3.0mm以下 しわの発生 いずれの試験体にもあってはならない。 固形分 70.0±3.0% -
Q9:塗膜防水材が使われるようになった理由は?
外壁塗膜防水材が使われるようになったのは、市場の背景、材料性能及び責任施工体制など諸条件が社会ニーズに合致したためです。
市場の状況
- 1) 建物にひび割れの発生が多くなった。
コンクリート建造物にひび割れが多発するようになったのは、①ポンプ圧送工法の普及により、水量の多い高スランプコンクリートを使用することが多くなった。②建物のスパンが大きくなった。③複雑なデザインが多くなった等の理由によります。 - 2) 漏水発生部位が変わった。
それまではコンクリート建造物の漏水原因はほとんど屋根スラブからと考えられていましたが、漏水原因の40~50%は外壁にあるとされるようになりました。 - 3) 外壁防水材に適当な材料がなかった。
外壁に適用できる材料は、防水モルタル、各種吹付仕上材等で高度の化粧性と防水性を兼備した材料がありませんでした。
また、使用材料及び施工面からみると、一世を風靡した吹付タイルは発売以来10年以上経過し、新しい材料が待望されていました。
外壁防水材は優れた伸び性能をもってひび割れに追従して防水性を保ち、かつ耐久性に優れ化粧性も良好でした。さらに施工に当っては、全国ハーゲン防水美装工業会のように、専門に養成された施工業者の手で責任施工体制が採られ、かつメーカー連名で防水保証を行ったことなどから市場に安心して迎えられ定着するに至りました。 - 1) 建物にひび割れの発生が多くなった。
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Q10:外壁塗膜防水材の必要性は?
防水性、躯体の保護を目的とし外壁塗膜防水材を施工します。
- 1) 防水性
多孔性のALCパネルやブロック等の壁面に防水が必要なことは言うまでもありませんが、コンクリート外壁にもひび割れが生じ、しばしば雨水が浸透漏水し、このため外壁を防水する必要が喚起されてきました。一般的にコンクリートの場合、毛細管現象により吸い上げられた水がひび割れより浸入し漏水が始まります。また、コンクリート壁に漏水が生じるひび割れ幅は、一般的に風の影響も考慮し0.1㎜程度のひび割れがあれば漏水すると言われています。
一方、日本建築学会ではコンクリート造の外壁に生じるひび割れ幅を0.3mm以下に設計することを目標にしていますが、ひび割れは覚悟しなければなりません。これらのことからRC建物は条件によっては常に漏水の可能性があり、そのため、ひび割れが生じてもそのひび割れに追従する防水材を必要としています。RC建物以外の外壁についても防水は必要であり、それぞれの材質に対しても、それら下地に適切な外壁塗膜防水材と防水施工仕様が必要となります。 - 2) 躯体の保護
現在の技術では防ぐことのできないコンクリートのひび割れ、そこから浸入する雨水により鉄筋の腐蝕が始まります。そして発錆による鉄筋の膨張さらにひび割れの進行とその繰り返しにより、最後にはコンクリートの剥落に至ります。また、空気中の炭酸ガス等の影響により、次第にコンクリート中のアルカリ分が失われていく中性化現象も知られています。その結果、鉄筋の周囲にあるコンクリートのアルカリ性が鉄筋の錆びることを防止していますが、中性化することにより鉄筋が腐蝕し、鉄筋とコンクリートの付着力が低下して、鉄筋コンクリートの耐久性が失われることになります。
また、コンクリート中の骨材の中にはセメント中のアルカリと反応して、珪酸アルカリゲルを生成し、水の作用によって膨張、ひび割れを生じる骨材の問題(アルカリ骨材反応)があります。
コンクリートのこれらの劣化現象には例外なく水による影響を大きく受けていることがわかります。そのため、水の浸入を防ぐことはコンクリートの劣化現象を防ぐことになります。したがってコンクリートの耐久性を上げるため、塗膜防水材を塗布することは、極めて有効な対策となります。すなわち、塗膜防水材が持ち、他の仕上材にない
- ① ひび割れ追従性
- ② 防水機能
- ③ 炭酸ガス等の遮断性能
等の性能がコンクリートの劣化の原因である雨水や炭酸ガス等の影響を防ぎ、コンクリートの寿命を長持ちさせます。したがって、建築物の外壁に塗膜防水材を塗布することによって寿命を延ばすというメリットがあることはあきらかです。
- 1) 防水性